- 当社では、採用時の必要書類として住民票記載事項証明書や身元保証書を提出させています。しかし、先日、採用した社員が「プライバシーにかかわることなので、提出したくない」と言っています。本人がどうしても拒否した場合、この者の採用を取り消してもよいですか?
会社がいったん採用の意思を本人に通知した場合には労働契約が成立したものと認められ、その後の会社からの一方的な取消は労働契約の解除、つまり「解雇」にあたることとなります。
したがって、採用の取消が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされる可能性があります(労働契約法第16条)。
書類の提出を拒む態度を示したからといって、直ちに採用を取り消すことは避けたほうがよろしいでしょう。今回、住民票記載事項証明書や身元保証書の提出が採用の条件とされているものと考えられますが、これらの書類が、採用後の業務遂行や諸手続に必要不可欠な書類であるかどうかを考慮する必要があります。
業務上の必要性が低い書類の不提出の場合には、採用取り消しについては慎重に判断すべきでしょう。
いずれにしても、本人に対して書類の必要性や利用目的などをよく説明し、十分な話し合いの機会を持った上で、それでも応じない場合に初めて採用の取り消しを検討すべきです。(参考)
採用取り消しの有効性については、裁判例では以下の点が考慮されています。- 会社が提出を要求した書類が、採用後の業務遂行や諸手続(社会保険手続等)を行うにあたり、必要性の高い書類であるか
- 書類の不提出によって、労働関係に重大な支障が生じるかどうか
- 書類の提出が採用の条件とされているか
(参考:名古屋タクシー事件・名古屋地裁昭和40年6月7日判決、シティズ事件・東京地裁平成11年12月16日判決)
- 懲戒処分として賞与の一部を不支給とすることはできますか?当社は、年に2回賞与を支給しています。このたび、懲戒処分として賞与の一部を不支給とする規程を就業規則に設ける予定です。このような規定は、法律に抵触するのでしょうか。
賞与の支給額を決定するにあたっては、事前の取り決めがない限り事業主に裁量が与えられており、個々の勤務成績などをもとに増減させることは、当然に認められるべきものです。
したがって、賞与査定の結果として評価が低いことを理由に支給額を減らすことは、「減給の制裁」には該当せず、金額にかかわらず労働基準法には抵触しません。
しかし、賞与も労働基準法で定める「賃金」に該当します。そのため、賞与の一部を不支給とすることは、労働基準法に定める「減給の制裁」に該当し、就業規則で定めるにあたっては一定の制限があります。
賞与とは
労働基準法において賞与は、「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定されていないもの」と定義され、そもそも賞与を支給するかは事業主の裁量によります。
しかし、賞与を制度として設け、算定期間、支給基準、支給額、計算方法、支給期日、支給対象者などを定めている場合には、労働基準法では「賃金」に該当するとされています。
減給の制裁(労働基準法第91条)
賞与が「賃金」に該当するということは、労働基準法に定める「減給の制裁」が適用され、以下の制約を受けます。
- 減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない
- 上記1.における減給の総額が、1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない
そのため、就業規則で懲戒処分として賞与の一部を不支給とする場合には、上記の要件を満たさなければなりません。
また、上記の金額を超えて減給の制裁を行う必要がある場合には、その部分の減給については、次期の賃金支払期に延ばして行うことなります。
- 平成27年1月から高額療養費が変更になるって本当ですか?
はい、本当です。
平成27年1月から70歳未満の方の高額療養費の自己負担限度額が変更になります。
但し、70歳以上の方は変更ありません。平成26年12月まで
所得要件 自己負担限度額 上位所得者
(基礎控除後の所得600万円超)150,000円+(総医療費-500,000円)×1%
<多数回該当:83,400円>※1一般所得者
(基礎控除後の所得 600万円以下)80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
<多数回該当:44,400円>※1低所得者※2
(住民税非課税者)35,400円
<多数回該当:24,600円>※1平成27年1月から上位所得者と一般所得者が2つに区分されます。低所得者は変更ありません
所得要件 自己負担限度額 上位所得者
(基礎控除後の所得901万円超)252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
<多数回該当:140,100円>※1上位所得者
(基礎控除後の所得600万円超~901万以下)167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
<多数回該当:93,000円>※1一般所得者
(基礎控除後の所得210万円超~600万円以下)80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
<多数回該当:44,400円>※1一般所得者
(基礎控除後の所得210万円以下)57,600円
<多数回該当:44,400円>※1- 1多数回該当とは、過去12カ月に、同じ世帯で高額療養費の支給が4回以上あった場合の4回目から適用される限度額です。
- 低所得者については、平成27年1月からの変更ありません。
- 同一医療機関等における自己負担では上限を超えない場合でも、同じ月の複数の医療機関等における自己負担を合算することができます。但し、70歳未満の自己負担の場合は、同一医療機関等で同じ月に21,000円以上必要です。
- 「36協定(サブロク協定)」とは何ですか?
「36協定(サブロク協定)」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思います。しかし、具体的な内容についてはご存知ない方もいらっしゃると思いますので、解説致します。
【定義】
36協定とは、労働基準法36条に定められている労使協定のことです
【解説】
まずは、労働基準法32条をご覧ください
第32条
1,使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2,使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させては
ならない。
労働基準法によると、労働者は1週間に40時間、一日8時間を超えて働くことを禁止されているのです。
しかし、実際皆様はもっと働かれていますよね?
労働基準法32条の労働時間を延長するためには、経営者と労働者による協議を行う必要があります。この協議によって結ばれる協定のことを「36協定」と呼ぶのです (根拠法が労働基準法36条であるため)
【補足】
◎36協定を締結しても、際限なく残業を命じることが出来るわけではない
→厚生労働省からの告示により、36協定における労働条件については一定の基準が設けられています
…(例)1カ月の残業時間は45時間以内に収めなければならない (例外あり)
これは法律ではないので、この基準を守らないことが即違法と判断されるわけではありません。しかし、なるべくこの基準を超えないようにしなければならないという努力義務は存在します
◎36協定では以下の内容について決めなければならない
・時間外または休日労働を必要とする具体的事由
・業務の種類
・労働者の数
・1日及び1日を超える一定期間について延長することのできる時間または労働させることができる休日
・協定の有効期間
- 厚生年金基金から年金を受けていますが、国から受けている年金額はどのようになりますか?
厚生年金基金から年金を受けている方の年金額については、国(機構)からお支払いする年金額と厚生年金基金からお支払いする代行部分の年金額との合計額となります。
平成25年10月分からの年金額については、これまでの年金額と比較して、この合計額から1.0%引き下げられることとなりますが、厚生年金基金の代行部分については、特例水準解消による改定は行われないため、国からお支払いする年金額から厚生年金基金の代行部分にかかる引き下げ分がさらに差し引かれます。
なお、引き下げ幅の合計については、厚生年金基金から年金を受けられていない方と変わりません。