- 残業代を基本給に組み込んで支払う場合、どんな点に注意すべきでしょうか?
下記2点の実施が必須となります。
①「基本給に残業代が含まれる」旨を就業規則等に明記する
② 基本給のうち「どの部分が残業代に相当する部分なのか」を明確に区分するまた、単に「基本給に残業代を含む」というような規程ではなく、次のように金額や割合によって残業代部分を明確にしなければいけません。
例1)基本給30万円のうち5万円を時間外・休日・深夜の割増賃金として支払う。
例2)基本給のうち20%を時間外・休日・深夜の割増賃金として支払う。残業代の固定払いに関する有効性が否定された裁判例をみると、「就業規則等への明示」や「残業代部分の金額や割合による明確な区分」がなされていないと有効とは認められない場合が多いようです。
また、当然ながら「実労働時間による残業代」が固定払いの金額を超えた場合には、その差額分の支払義務が生じることとなります。
- 雇用保険の失業等給付を受けますが、給付制限期間中は被扶養者になれますか?
自己都合等で離職した場合、失業等給付受給までの1か月から3か月は給付制限期間中のため失業等給付を受けられませんので、その間は被扶養者になることができます。
給付制限期間が終わり、失業等給付を受けると、主として被保険者の収入により生計が維持されているとは認められませんので、必ず扶養削除の手続きを行ってください。ただし、失業等給付も基本手当日額が3,612円未満《5,000円未満》の場合は、失業等給付受給期間中であっても被扶養者になることができます。
なお、失業等給付の受給の有無に関わらず、他に収入(年金、傷病手当金、家賃、不動産収入等)があり、年間収入が130万円(日額3,612円)《180万円(日額5,000円)》以上の人は被扶養者になることができませんので、ご注意ください。
【例】
- 60歳未満(障害なし)
- 遺族年金90万円
- 失業等給付の基本日額3,000円
の場合
遺族年金の日額は90万円÷360(日)=2,500円となります。
失業等給付の基本日額とあわせると日額5,500円となり、3,612円以上となりますので被扶養者になることはできません。《》は60歳以上または障害厚生年金を受給できる程度の障害のある人の場合
- 従業員がC型肝炎(私傷病)にかかり休職することになりました。治療費については公費負担があるようなのですが、それを受給しながら傷病手当金の申請を行うことは可能でしょうか?
結論から申し上げますと、両方を受給することが可能です。
理由としては、下記のようにそれぞれの目的が異なるためです。
① 治療費の公費負担については、「患者の治療費負担の軽減」が目的であること
② 傷病手当金については、「収入の喪失や減少を補てんする生活保障」が目的であること
『目的が同じであり、二重に補てんすることになってしまう』ケースや、『併給するとそれぞれの目的に矛盾が生じてしまう』ケースについては、受給できる一方もしくは双方に制限がかかることがありますが、ご質問のケースでは目的が異なるため、双方を受給できることになります。
参考までに、傷病手当金の支給申請書にも公費負担の受給云々を記載する欄はありません。
- 現在、試用期間中の従業員がいるのですが、社内で定めている試用期間よりもう少し長めに様子を見たいと考えています。注意すべき点はありますか?
就業規則に「会社が試用期間を延長できる合理的な事由」が定められており、その項目に該当すれば延長することは可能と考えられます。
<解説>
使用者の中には「試用期間はお試し期間だから、勝手に長くしても問題ない」と思われている方も少なくありません。
しかし、試用期間の一方的な延長は労働者にとって不安定な状況におかれるという不利益を被るだけでなく、後々のトラブルとなる可能性が大きいものです。
まずは就業規則に記載されている延長事由
(例えば「出勤状況が不良である・ミスが多く指導を重ねているが改善されない 等」)に該当しているか確認し、該当していればその箇所を判断基準として延長するという文書を交わしておくことが必要です。
また、延長する期間を定めていない場合には本採用したと判断される可能性があります。「今回延長する試用期間は〇年×月から△月までとする」など、必ず期間を定めておくようにして下さい。
- 週休2日制の場合、どちらかの休日に労働させても休日労働扱いになるのでしょうか?
どちらか1日が休日として確保されていれば、原則として労基法上の休日労働には該当しません。
<解説>
労基法では、休日に関して
「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日(=法定休日)を与えなければならない」(労基法第35条)
と規定されており、この「法定休日に労働させること」を休日労働といいます。
しかし、法定休日については曜日等を特定しておかなければならない、などの規定はないため、例えば土日がお休みの職場で日曜に出勤した場合、土曜日が休みであれば労基法上の休日は確保されているため、休日労働という問題は発生しないことになります。ただし、上記例においても就業規則等に「法定休日は日曜とする」等の記載がありますと、土曜日の休みが確保されていても日曜に出勤すれば「休日労働」として取り扱わなければならないこととなる可能性がありますので、注意が必要です。
また、上記例のように他に休日が確保されていれば、当然休日労働分の割増賃金は発生しませんが、週の法定労働時間を超えて働かせた場合には、時間外労働分の割増賃金の支払が別途必要になります。