- 個人で事業(商店)を営んでおり3人の従業員がいます。現在、各人それぞれ国民健康保険に加入していますが、従業員から健康保険に加入したいとの申し出がありました。会社としても認めようと考えていますが、個人事業で健康保険に加入できるのでしょうか?
法人は、従業員の数に関係なく強制適用となりますが、個人事業は下記の要件をいずれも 満たしている場合に限り強制適用となります。
(=下記の要件を満たしていなければ強制適用となりません)- 法律に定められた業種(適用業種※)を行っていること
- 常時5人以上の従業員を使用していること
ご質問では、商店なので①には該当しますが②には該当しませんので、任意適用事業所となります。しかし、事業主が従業員の方の2分の1の同意を得られれば、任意加入の申請をすることができます。この場合、当該従業員の同意書を添付して申請を行うこととなります。
なお、健康保険法第3条において被保険者とは「適用事業所に使用される者」と定義されています。個人事業の事業主はこの「使用される者」とはみなされませんので、健康保険に加入することができません。
参考
適用が強制されない「非適用業種」は下記の通りです。- 第一次産業 … 農林水産業 等
- サービス業 … 旅館業、飲食店業 等
- 法務 … 弁護士、公認会計士、社会保険労務士、税理士 等
- 宗教 … 神社、寺院、教会 等
- 当社では、傷病等により2週間以上欠勤した者に対し、一律6,000円の傷病見舞金を支給することを就業規則に定めています。仮にその者が退職した場合、支給した見舞金は基本手当の算定の基礎に含まれるのでしょうか?
ご質問のケースでは、次の2点の取扱いの違いがポイントとなります。
支給した見舞金が
①「労働基準法における賃金」に該当するか否か
②「雇用保険法における賃金」に該当するか否か
【①について】
労働基準法における賃金とは
「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」(労基法第11条)
とされています。
言い換えると、労働の対償としてではなく、あくまで任意的・恩恵的に支給する性格のものであれば、賃金には該当しないことになります。
しかし、任意的・恩恵的なものでも労働協約や就業規則などで、支払義務が客観的に定まっているようなものは賃金と考えます。ご質問の傷病見舞金は、任意的・恩恵的に支給するものと考えられますので原則として賃金には該当しません。しかし、就業規則によって支給を義務付けられているということは労働者の権利として保護されていると考えることができ、この場合は賃金として取り扱います。
【②について】
雇用保険法では「臨時に支払われる賃金および3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金」は支給の義務の有無にかかわらず基本手当の計算の際の賃金には含めないこととされています。
ご質問の傷病見舞金は「臨時に支払われる賃金」に該当するため、賃金に該当しません。【まとめ】
ご質問にある条件で支給する傷病見舞金は、労働基準法上は賃金として考えますが、雇用保険から給付を受ける際には賃金として考えないことになります。したがって基本手当の算定の基礎に含まれないこととなります。
- 2つの事業所に同時に勤務しています。両方で社会保険に加入しているのですが、社会保険料の額はどのように計算されるのでしょうか?
健康保険法には、
「同時に2以上の事業所から報酬を受ける被保険者については、各事業所について前記のそれぞれの方法によって算定した額の合算額が報酬月額とされ、これに基づいて報酬月額が決定される」(健康保険法第44条3項)
と明記されています。
つまり、事業所ごとに単体で保険料額が決まるのではなく、
① 各事業所で標準報酬月額を算出する(例:A社→30万円、B社→10万円)
② ①で算出した報酬月額を合算する (30万円 + 10万円 = 40万円)
③ ②の合算額を基に標準報酬月額を決定する(40万円 → 27等級の41万円)
このようなプロセスを経て決定されることとなります。
また、保険料については、上記③の標準報酬月額に該当する保険料額を、①の各事業所の標準報酬月額に応じて按分することとなります。
上記の例でみると、標準報酬月額41万円の場合の健康保険料の全額は45,141円(40歳以上)です。この額を、A社が30万、B社が10万の標準報酬月額ですから、3:1に按分するわけです。
A社:45,141円÷4×3=33,855.7円
B社:45,141円÷4×1=11,285.2円
この額をそれぞれの事業主と折半して支払います。
なお、2以上の社会保険適用事業所に勤務される場合は各種届出が必要となりますが、届出先は協会けんぽではなく年金事務所となっています。
- 休職中の社員の社会保険料の処理は、どのようにすればよいでしょうか?
まず、休職中であっても被保険者としての身分は存続していますから、被保険者自身はもちろん、事業主も当然に保険料を支払わなければなりません。
ただし、休職は会社都合ではないケースが多く、結果として(休職者が受ける)給与が発生していないのに保険料を徴収しなければならないことになります。
実務上の取扱いとしては、
・会社側が一旦立替払いをし、復帰後にまとめて本人に請求する。
・毎月、本人から会社へ自己負担分を振込してもらうよう依頼する。
など、就業規則等の定めに従って措置が取られます。
なお、休職という事由によって保険料の減額が可能かどうかについては、病気等による休職は「一時的な現象」であり、継続的な理由とはみなされません。
つまり、随時改定(月額変更)の要件には該当しないこととなり、休職前の標準報酬月額に基づいた保険料を支払わなければなりません。
以上が主な手続となりますが、現実には充分な説明のないまま保険料を引かれることで職員と会社側がトラブルとなるケースが後を絶ちません。
休職する職員がいる場合、
「休職前に話し合いの時間を持つ」
「就業規則等のルールの確認・見直しを図る」
など、トラブル防止に努めましょう。
- 解雇予告をした後、その予告期間中の勤務態度を見てまじめに勤務している場合、その予告をなかったものとすることは可能でしょうか?
仮にこのような「条件付き解雇」が認められるとすると、例えば「自分では以前よりまじめに勤務している」と思っていても、使用者側の判断で予定通り解雇される可能性があります。
逆に「予告期間中に次の仕事が決まった」としても、使用者の一方的な判断で解雇予告を取り消され、引き続き勤務を要求されるケースも考えられます。
つまり、労働者の立場が、使用者のさじ加減ひとつで決まってしまうような、極めて不安定な状態に置かれることとなります。
解雇の意思表示は、法律では「約定解除権の行使」にあたり、民法第540条第2項の規定により、一方的に取り消すことはできないとされています。つまり、このような条件付きの解雇は適法とは認められません。
もしもその労働者を引き続き雇用したいということであれば、本人の同意を得て解雇を取り消す、という手順を踏むことが必要となります。
参考 (民法・解除権の行使)
第540条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2項 前項の意思表示は、撤回することができない。